前回に続き、レポートの書き方・基本編の第二回です。
前回はレポートの種類や基本的な原則などの抽象的な概念を扱いました。今回からは、より個別具体的な「本文の書き方」について学びます。
今回は、前回の課題で作成したアウトラインを元にレポートの全体図を作成し、冒頭部分を書いてみます。
目次
レポートの章立て
レポートは、いくつかの章から構成されます。レポートの内容を個々の章に分けることを「章立て」と呼びます。
例えば、序論・本論・結論をそれぞれ一つの章として章立てすれば、三章分で構成されたレポートが出来上がります。
しかし、本論は文量が多いため、章をさらに細かく分けたり、二章以上の章に分けたりすることがあります。
章より細かく分ける際は「節」を用い、さらに節を細かく分ける際は「項」を用います。そして、章・節・項にはそれぞれ小見出しを付けます。
なお、序論や本論は「節」や「項」は基本的に使いません。(節や項に分ける必要があるほど長い序論や本論は、あまり良いとは言えないためです。)
余談ですが、ページ数が多い学術論文では「序」と「結論」は章立てしないことがあります。また、序論を「0章」とし、本論から「1章」とする記載方法もあります。
前回のアウトラインを参考に、大まかな章立てをしてみましょう。
レポートで章・節・項を記載する際は、以下のような記載法があります。
漢字による記載法
- 第一章 序論
- 第二章 早生まれ問題の現状
- 第一節 プロ野球における早生まれ問題
- 第二節 サッカーにおける早生まれ問題
- 第三節 その他の早生まれ問題
- 第一項 教育現場
- 第二項 早生まれを取り扱った文学作品の例
- 第三章 早生まれ問題の現状
- 第一節 課題
- 第二節 考察
- 第四章 結論
算用数字による記載法
- 1. 序論
- 2. 早生まれ問題の現状
- 2.1. プロ野球における早生まれ問題
- 2.2. サッカーにおける早生まれ問題
- 2.3. その他の早生まれ問題
- 2.3.1. 教育現場
- 2.3.2. 早生まれを取り扱った文学作品の例
- 3. 早生まれ問題の現状
- 3.1. 課題
- 3.2. 考察
- 4. 結論
ローマ数字とアルファベットによる記載法
- Ⅰ. 序論
- Ⅱ. 早生まれ問題の現状
- A. プロ野球における早生まれ問題
- B. サッカーにおける早生まれ問題
- C. その他の早生まれ問題
- a. 教育現場
- b. 早生まれを取り扱った文学作品の例
- Ⅲ. 早生まれ問題の現状
- A. 課題
- B. 考察
- Ⅳ. 結論
見やすさ等を考慮して、適切な章立てをしましょう。
全体的なレポートの展開方法
レポートにおいて本文中で主題をどのように展開していくかは重要なポイントとなります。定石と言われるレポートの展開方法には「直列型」と「並列型」が存在します。
直列型構成
<序論>
慣用句は婉曲に表現する際に役立つ言葉であるが、難解な言葉として敬遠してしまう人も少なくないと思う。
本稿執筆者は、ある法則性に従ってこれらの慣用句を類型化することが可能だと考える。共通する語を含む慣用句は意味が似通っているものが多いためである。
そこで本稿では、身体の部位を用いた慣用句から日本語の法則性を検討していき、慣用句の類型化を目的として考察を行っていく。
<本論>
慣用句における「目」は、判断力を象徴していることが多い。「目が肥える」「目が利く」という語がその例だ。顔の部位を慣用句で用いることで、何かを象徴しているパターンは類型化が容易い。
例えば、「鼻」もよく慣用句で用いられており類型化が可能である。
「鼻」は、自尊心を象徴する部位である。これは「鼻にかける」「鼻を折る」「鼻を高くする」という慣用句からも明らかだ。自尊心は、大変具体性のある『心』の一種だ。心を象徴する部位は、心臓に近ければ近いほどより抽象的になる。
このことを前提に「胸」や「腹」についても考察してみる。
「胸」は(抽象的な)心、「腹」は本心を象徴し、心臓に遠い部位の方がより具体性が高い心を示していると言える。
前者は「胸に刻む」「胸に浮かぶ」など、後者は「腹を割る」「腹を読む」などが挙げられる。
<結論>
本稿では「目」は判断力、「鼻」は自尊心、「胸」は心、「腹」は本心を象徴していると考察した。
ここから「同じ身体の部位を含む慣用句で、意味のグループ分けができる」という法則性を見出すことができた。必ずしもこの法則性に従うとは限らないが、慣用句をある程度類型化することが可能になった。
直列型構成は、序論で抽象的概念を提示し本論で具体的事例を列挙する方法です。
本論の各段落は前段落と連関があることが直列型の特徴で、前段落の終わり部分に書かれているトピックが次の段落の書き出しになっています。
具体的事例の間に何かしらの関連性がある場合は、直列型で書くと良いです。
並列型構成
<序論>
漢字検定協会が発行している四字熟語によると、故事来歴の四字熟語は少なくとも四千語以上存在する。
本稿執筆者は、ある法則性に従ってこれらの語を類型化することが可能だと考える。なぜなら、この莫大な語の中には似たような語を含んでいるものが存在するからだ。
本稿では、友情が深いことを表す四字熟語・書き間違いを表す四字熟語・美人を表す四字熟語から日本語の法則性を検討していき、四字熟語の類型化を目的として考察を行っていく。
<本論>
第一に、友情が深いことを表す四字熟語について考える。このような四字熟語は「爾汝之交」「刎頚之交」「水魚之交」「管鮑之交」「金石之交」「断金之交」「断琴之交」など、「〜之交」という語を共通して含んでいる。
第二に、書き間違いを表す四字熟語の法則性を検討してみる。書き間違いを表す四字熟語には「魯魚亥豕」「魯魚章草」「烏焉魯魚」などがある。
これらの四字熟語は、前半の二つの漢字と後半の二つの漢字に類似性があり間違い易いことを表している。そして、間違い易いものの代表例として「魯」と「魚」という語を共通して含んでいることが読み取れる。
最後に、美人を表す四字熟語の法則性について考察する。美人を表す表現に「花の顔(かんばせ)」という語があるように、美人はしばしば「花」に例えられる。同様に、四字熟語でも「天香桂花」や「花顔柳腰」などという表現が存在する。
よって、美人を表す表現には共通して「花」を含んでいる。
<結論>
本稿では、友情が深いことを表す四字熟語は「〜之交」、書き間違いを表す四字熟語には「魯」と「魚」、美人を表す四字熟語には「花」という語が含まれていると考察した。
ここから「同じ意味の四字熟語には、同じ語を含むことがある」という法則性を見出すことができた。必ずしもこの法則性に従うとは限らないが、四字熟語をある程度類型化することが可能になった。
並列型構成は、序論の中で述べる項目を列挙し本論で各項目の内容を詳細に述べる方法です。
序論で述べた項目順に本論の各段落が構成されていることが直列型の特徴です。それぞれの段落間には、順序を現す接続詞やつなぎ言葉(はじめに・次に・最後に/第一に・第二に・第三に など)を使いましょう。
各項目に関連性がなくそれぞれが別個に存在している場合は、並列型で書くと良いです。
段落の展開方法
全体の構成法として「直列型構成」「並列型構成」の二つを紹介しました。しかし、これらはあくまで全体の流れの話であり、長いレポートを書くには各段落の展開も重要になります。
ここからは細かい文章展開の方法を学びます。本記事では、篠田義明(1986)『コミュニケーション技術―実用的文章の書き方(中公新書)』の内容を参考に、以下の九通りの方法を紹介します。
例示による段落展開
例文①
年々、男性の美意識が高まっていると思う。(自分の考え)
男性化粧品売り場では20年前に比べ、スキンケア商品の種類が増えた。(例①)
また、男性向けの眉カット専門店やエステなど、自分を磨く施設も増えた。(例②)
永久脱毛をする男性もおり、もはや男女の区別なく美を追求している。(例③)
例をあげることで自分の考えに根拠を持たせる展開法。
分析による段落展開
例文②
電車運賃の支払い方法は、ICカード払いと切符払いがある。(大概念の分析)
ICカード払いは切符払いよりも安く、早く入場が可能だ。(小概念①)
切符払いは不正利用されづらく、ICカードを忘れた時に有効である。(小概念②)
上位の概念を最初に述べ、それを構成する下位の概念を順に述べる展開法。
定義による段落展開
例文③
石頭という言葉の「石」は、地面に落ちている固い物質ではなく、「固さ」という抽象的概念を示すアレゴリーである。
とある単語・句・考えなどを他の言葉で言い換え、読み手に誤解を与えないよう明確に定義する展開法。
主張とその理由による段落展開
例文④
私は、小説家が最も創造力に富む人間だと考える。(結論)
第一に、小説家は他の仕事を兼業していることが多く、人生経験という面でアドバンテージを持っているからだ。深い経験から生み出される創造は、他の職業では得られない。(支持文①)
第二に、小説を書くという行為そのものが創造的行為だからである。創造することを業としているのが、小説家と言えよう。(支持文②)
最後に、小説を書く自体が非常に効率の悪い行為であるからだ。村上春樹の『職業としての小説家』で指摘されているように、自分の言いたいことをあえて婉曲的な表現にするのが小説である。この一連の手続きを支えるのは、創造力に他ならないのだ。(支持文③)
まず結論を書き、それを支持する理由(サポーティングセンテンス)を後に記述する展開法。
時間軸(タイムライン)による段落展開
例文⑤
ポケットモンスターは、長い間世界中で愛されているゲームである。シリーズ原点である『赤・緑』は1996年に発売され、全世界で3000万本以上を売り上げた。(1996年)
そこから3年後、シリーズ続編となる『金・銀』は全世界で2000万本以上を売り上げ、通信交換という革新的機能が追加された。(1999年)
2000年代で最も大きな進歩を遂げた作品は『ダイヤモンド・パール』だろう。インターネット通信を可能にし、2000年代最大の売り上げである「全世界1700万本以上」を記録した。(2000年代)
出来事を起きた順に記述する展開法。
過程(プロセス)による段落展開
例文⑥
ポケモンを捕まえるにはコツがある。
まず、草むらや水上などのポケモンの住処を探り、ポケモンが出てきたらバトルを始める。(過程①)
そして、ポケモンが瀕死にならないギリギリまで攻撃する。(過程②)
最後に、状態異常(ねむり・やけどなど)にしてボールを投げる。(過程③)
過程を順に記述する展開法。
因果による段落展開
例文⑦(原因から結果)
所得が高いことが、様々な利得をもたらすことは想像に容易い。(原因)
まず、所得が高いことで高度な教育を受けさせられ、子どもが良い仕事に就く可能性が高まることが挙げられる。(結果①)
さらに、所得があれば充分な医療を受けさせることができるため、高所得者の寿命が上昇する。(結果②)
しかし、金銭感覚の麻痺・低所得者への理解の欠如など 高所得者であることは必ずしも良い影響をもたらすわけではなさそうだ。(結果③)
例文⑧(結果から原因)
現代日本はキャッシュレス化が進んでいる。(結果)
その背景には、メルペイ・LINE PAYなどのアプリに付随する電子マネーの存在がある。(原因①)
また、おサイフケータイの機能で、携帯がPASMO代わりになるというのも要因の一つだ。(原因②)
さらに、現金払いよりもメリットがあるシステム・キャンペーンを推進し、電子マネーが普及したことは日本のキャッシュレス化に大きく影響している。(原因③)
原因から結果(または結果から原因)を、重要な順に記述する展開法。
類比または対比による段落展開
例文⑨(類比)
タラバガニは、実はカニの仲間ではなくヤドカリの仲間だ。
一般的なカニは足が十本で、一般的なヤドカリは足が八本だ。
それに対し、タラバガニの足は八本である。そのため、ヤドカリの仲間に分類されるのだ。
例文⑩(対比)
ジャポニカ米・インディカ米などの種類が挙げられる「米」は、私たちにとって大切な栄養源である。
ジャポニカ米は円形で、粘り気や弾力がある。日本でよく食べられる米である。
一方、インディカ米は細長く、粘り気が少ない。そのため、パエリアなど海外の料理に使われやすい。
二つ以上のものを比較し、共通点(類比)または相違点(対比)を述べる展開法。
問題とその解決法による段落展開
例文⑪
iPhoneに付属する白いイヤフォンは、音漏れするという欠点がある。(問題点)
この欠点を補うには、以下の方法が挙げられる。(導入)
まず第一に、音量を下げることだ。これが理想的な方法である。(解決法①)
第二に、付属イヤホンの使用をやめることだ。根本的な解決法にはなっていないが、音漏れによる諸問題は解決可能である。(解決法②)
問題点を最初に挙げ、重要な順に解決法を列挙する展開法。
今回の課題とまとめ
今回の課題
レポートの章立てをした上で、全体的なレポート展開法を参考に(「直列型」または「並列型」でレポートを展開する前提で)序論~本論の冒頭までを書いてみよう。
なお、直列型構成や並列型構成はあくまでテンプレートであり、必ずこの展開法で書かねばならないというわけではありません。
前回の記事内容(序論の内容、文体の統一、事実と意見、ワンパラグラフ/ワントピックなど)を振り返りつつ、序論と本論の冒頭を組み立てていきましょう。
次回は参考文献を探して本論と結論を組み立てるので、本論を書く際などで使える九つの段落展開法をおさらいしておきましょう。
今回のまとめ
- 「章」を細かくすると「節」、「節」を細かくすると「項」
- 文章全体の流れは「直列型構成」「並列型構成」
- 代表的な段落展開法は九種類ある
- 例示:自分の考え・事実の提示→例の提示
- 分析:大概念→小概念
- 定義:とある語を別の語に言い換え
- 主張とその理由:主張→それを支持する理由
- 時間軸(タイムライン):出来事の発生順
- 過程(プロセス):過程順
- 因果:原因→結果/結果→原因
- 類比・対比:共通点や相違点を示す
- 問題とその解決法:問題点→解決法
次回は『参考文献の探し方・引用の方法』について学びます。剽窃を防ぐために知っておくべき内容が詰まってますので、次回も絶対に目を通すようにしましょう。
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