ものごとは、頭で考えれば考えるほど難しくなる。
挑戦することだって、人と出会うことだって、いつでもなにか言い訳を探しているような気がする。
でも、その言い訳がなにを生み出すのだろうか。小さな挑戦の積み重ねが新しい未来を作っていくのではないだろうか。
今回は、小さな興味を大きな挑戦に変えていきながらある一つのプロダクトを完成させた大学生、八幡尚希さんにお話を伺っていこうと思う。
目次
プロフィール
項目 | 詳細 |
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お名前 | 八幡 尚希(やはた なおき)さん |
大学 | 慶應義塾大学 4年生 |
SNS |
groupyの紹介
groupyは、「みんなでご飯から始める」をテーマとしたグループマッチングアプリ。
「1対1で会うのは不安」「友達とワイワイしながら出会いたい!」というニーズに寄り添い、日程調整やレストランを投票で一瞬で決めることができるなどユーザーファーストな機能を提供している革新的なアプリだ。
2022年の11月に大幅なアップデートを実施し、より使いやすく、より便利にリニューアルされた。
インタビュー
groupyについて
よろしくお願いします。
まず、groupyは友人・知人と最低2名のグループを組んで始めるマッチングアプリです。
今年の4月にベータ版をリリースし、11月に大きなアップデートを行い正式なリリースに至りました。
そこで僕は、株式会社groupyの代表という形で開発やマーケティングに携わっており、これからはさらにプロモーションを行なっていく予定です。
ベータ版と比べて、今回のアップデートではどのような点が変わったのでしょうか?
まず、大きな変更点はマッチング後に(実際に会う)日程調整をしないとチャットに進めない、という点です。
groupyの場合、チャットはグループでのやりとりになるので、一人一人が話し難かったり、会話が埋まってしまうなどの課題があると思いこのような形に変更しました。
そのほかにもベータ版リリース以降、ユーザーの意見を分析してどんな機能を実装するべきかということを考えて細かいアップデートを重ねて今に至ります。
なるほど。
グループでのマッチングというと少しハードルが高いイメージもありますが、グループでマッチングすることのメリットとしてはどのように考えられているのでしょうか?
既存のマッチングアプリではどうしても1対1で出会うことになり、1人で相手と会うのが怖いという問題を解決したり、友達と一緒にマッチングしたいという潜在的なニーズに対してアプローチできると考えています。
ちなみに、ベータ版で使っていただいたユーザーの方の反響は良いものが多く、おかげさまで有料会員登録者数も増加しています。
おっしゃる通り、groupyでは最低2名以上、最大6名のグループを作るため少しハードルが高いのも事実です。特に女性の方は、他の人にマッチングアプリを使用していることを知られたくないという方も多いので、今後はインセンティブを設計したり、UIを工夫するなどしてユーザーを増やしていきたいですね。
ちなみに、八幡さんはどうしてこのような形のアプリを作ってみようと考えられたのでしょうか?
そうですね。直接的な理由としては、友達が「グループでマッチングできるアプリがあったらいいよね」と言っていたことがきっかけです。
正直、過去にあったグループマッチングのアプリやサービスもたくさんあり、市場もすでにあるものではないのである種無謀なチャレンジで、、。
無いサービスというのは、誰かが絶対考えてはいるものの形にしていない、つまりは需要がないサービスの可能性も高くリスキーな分野なのですが、学生起業の会社だからこそできるという強みもあると思いまずはこのテーマで起業しました。
他の人がやらないこと
リスキーな分野にあえて挑戦する。とても勇気が必要かと思います。
八幡さんが起業をしたり、あえてリスクを取ったりという部分に繋がるような理由や経験などがあれば教えていただきたいです。
自分はチャレンジ精神が強く、他の人がやらないことをするとか、既にあるルールを飛び越えてやってみる、ということが好きなんですよ。
子供の頃から人のやらないことをしてみようというマインドで過ごしてきました。
具体的な例を挙げると、高校1年生の時に南米のチリに留学に行きまして。
留学というと欧米に行くことが多いと思いますが、これもあえて他の人と違う国に行きたいということや、地理的特徴(南北に長く、北は砂漠で南は南極に面している)に興味があったのでチリを選んだり、、、
帰国してからも、自分の興味のあることにはどんどん積極的に行動をしていましたね。
すごい、、南米って食べ物も美味しそうでいつか行ってみたいと思っていたのですが、八幡さんは高1で留学されたとは、、
留学で得たものや感じたことはありましたか?
留学から帰った後の変化としては、「培養肉」の研究を始めたことでしょうか。
動物の細胞を培養して肉片を合成する技術なのですが、現時点では製造に何千万円というコストが発生するため販売もされてはおらず実用化にも至ってはいない技術ですが、、。
チリ留学から培養肉、、、一見因果関係が見えてきませんが、、
どうして培養肉に着目することになったのでしょうか?
実はチリから帰ってから半年間ほど、ヴィーガン生活をしていたんですよ。
チリは肉食文化が強く、頻繁にバーベキューをするなど食生活の中に肉の存在が大きい国なのですが、そんな中でもヴィーガンをしている人がいるということを知り、自分も「動物を機械的に消費するのは嫌だな」と感じて。
誰しも一度は考えることですよね。
そうですね。ペットのような動物には動物愛護法がありますし、動物がかわいそうというのは誰しも感じている部分だと思います。
でも、なかなか具体的な活動はできない。それでもどうにか解決したい、そう思って培養肉の研究を始めて、自宅で細胞を培養するところまでは進みましたが、食べられるレベルのものは完成していません。
その中でも、どのような環境だと細胞がより増えるのかということだったり、乾燥コンニャクなどを使用したらより培養が簡単になるのでは?など、試行錯誤を繰り返して様々な実験をしてきました。
八幡さんのチャレンジ精神がとてもよく感じられます。
その後、培養肉の研究はどのように進んでいるのでしょうか?
実は、ある程度研究したところでヴィーガン生活も含めやめてしまったんですよね。
元々肉を食べることは好きでしたし、正直めちゃくちゃ食べたいと思っていましたし。
でも、動物がかわいそうだよね、という感情で培養肉を作ったのですが、肉を食べないことだけが解決につながるのか?と言われるとそうではないような気もして。
全人類が食べなくなれば大きく変わるとは思いますが、それはあり得ないじゃないですか。
そうですよね。自分も親が同じような考えになったことがあって、子供の頃に菜食中心の生活をしていた時期がありましたが、肉が好きな自分にとってはかなり苦行でした。
やはり社会全体としていまだに意見が割れる理由としてはこう言った部分が大きいと思っています。
そうなんですよ。
そこで自分は、肉を食べないという路線ではなく、”動物の命をいただいている”ということに着目した食品づくりやマーケティングの方法で解決できないかと考えるようになりました。
様々な視点で物事を考えたり、解決策を導き出すという答えにたどり着けただけでも、自分にとって半年間のヴィーガン生活や培養肉の研究はとても価値がありましたね。
0からプロダクトを生み出せる喜び
様々な視点で考えるということ、頭ではわかっていても中々難しいことですよね。
八幡さんはそういった一つ一つのチャレンジが新たな発見につながってこられたのではと考えているのですが、現在のプロダクトに繋がる”IT”に結びついたのはどうしてだったのでしょうか?
僕がITの世界に入ったきっかけは、大学生になって中高生にプログラミングを教える事業を行っている企業でインターンをさせていただいたことがきっかけです。
元々全く興味がなかったのですが、そこで初めてプログラムに触れて「コードを書くだけでほとんどお金もかからずプロダクトが作れる」ということに感銘を受けたんですよね。
培養肉の研究は非常にコストがかかりますが、ITでのプロダクトはそうではない。
留学をしたときに、食文化に対する発見以外にも心の中でうっすらと「起業できたらいいな」と考えていたこともあり、「もし自分がビジネスをやっていくならITの分野しかないな」という感情が根付いて今につながっていると考えています。
これもまた一つの発見ですよね。
でも、新しいこと、特にプログラミングを0から学んでここまで形にするのは大変ではありませんでしたか?
そうですね。ただ、自分は元来理系マインドだったので、定義の定まらない概念のようなものを扱うよりは数学的・論理的に組み立てることの方が得意でした。
そこがプログラミングと相性良く結びついた感じでしょうか。
最初はjavascriptで図形を作るようなことから勉強を始めて。そこからgroupyを作るにあたって必要なものをインプットして、、という形で勉強して、、
groupyは様々な人がグループを作るという性質上、リリース時から両方のOSに対応する必要もあるんですよ。
ということで、クロスプラットフォーム(※1)で開発ができるFlutterに必要な知識をつけて開発を進めましたね。
都度、必要な知識を身につけていく形で進めてこられたんですね。一つ一つのスピード感が早く感じますが、これも起業という前提があってこそだと思います。
前後しますが、八幡さんはそもそもどうして起業をしてみたいなと考えていたのでしょうか?
正直、社会に出て会社員になる、というビジョンが自分の中で全く見えなかったんです。
大人数より少人数の方が心地良かったり、協調性が薄いということも感じていましたし。
あとは、この世に自分が生まれたことでより価値のある社会を作りたい、自分が死んだ後も後世に残るようなものを生み出したいと考えていた、というのも大きな理由ですね。
プロダクト愛があってこそ
その気持ち、とても共感できます。笑
私自身も感じていることですが、起業して経営をして、、とやっていくと会社員として働くのとはまた異なる大変さもあるじゃないですか。
八幡さんはどんなことが一番大変でしたか?
個人的には、モチベーションのコントロールが一番難しかったですね。
会社で働いていると、遅刻をしたら怒られるじゃないですか。単純に怒られる、というデメリットがあってそれを回避するための行動をするので自分を律すことができますが、自分の会社ではそれをコントロールするのも自分なんですよ。
なので、怠惰な人間だとそこが一番難しかったです。
自分が動かないと何も始まらないんですよね。
groupyを完成させるまでにはどれぐらい時間がかかりましたか?
1年ぐらいですね。
あ、でも開発という作業の中で大変だったことって実はないんですよ。
とにかく楽しくて、デザインのためにfigmaを学んだり、、、学ぼうと思ったらいくらでも教材があるような環境で新しいことを学んでいくのはめちゃくちゃ楽しかったので、そこから新しいプロダクトを作っていくのはなんの苦でもなかったです。
そこが八幡さんの強い部分ですよね。学ぶことに苦手意識があると、壁に当たった時点で挫折してしまうと思うんですよ。
継続していく中で自分がやりやすい方法やマインドなどはありましたか?
プロダクトに対する愛ですよね。
自分の子供を育てるように、プロダクトのためなら時間を割きたいですし、、、groupyが好きだからですね。まだ子供いないですけど笑
素晴らしいの一言に尽きますね。好きなことを仕事にするとそれだけ情熱を注げるということがよく現れていると感じます。
ちなみに、会社を始めてプロダクトを完成させて良かったことはどんなことがありますか?
それは本当にたくさんありまして、、、
まず、スキルがめちゃくちゃ上がりました。ユーザーへのインタビューだったり、デザインだったり、多方面のビジネスの基礎となるスキルが向上したことが得られたものとして大きいですね。
あとは、ユーザーの声を取り入れながらビジネスをすることの大切さを学びました。
プロダクトって、最終的にはユーザーの課題解決をするものじゃないですか。だから、ユーザーがなぜその課題を抱えているんだろうという部分から考えていったんですよね。
よくありがちな失敗として「これいいんじゃね?」みたいに十分に検討せずにプロダクトを作ってやっぱりダメで、、みたいなことがあると思うんですけど、groupyの開発においてはイシュードリブンが実践できたことが良かったことだと思っています。
いいことの方が多いのはすごいことだと思います。
では、いいこと・大変だったことそれぞれ伺いましたが、挫折せずに全て乗り越えて完成に至った決め手を最後に教えていただけますか?
ここに至るまでチームメンバーにも助けてもらって、自分の膨大な時間を費やしてきてここまできているので、生半可な理由でやめるわけにはいかないですよね。
「やればいいじゃん」という簡単なことをやらないという判断をしたくないじゃないですか。
経営判断としてやめるということではなくて、意志が尽きるという形では絶対に辞められない。その思いが一番強かったと思います。
出会いで未来を明るく
最後の質問としてお伺いさせていただきます。
八幡さんが手塩にかけたgroupyはこれからどんどん利用者が増えていく状況だと思いますが、八幡さんはこのgroupy、または自分の会社での事業を通してどのように社会に変化を与えていきたいですか?
そうですね。一言でいうと日本をもっと強い国にしていきたいです。
少子高齢化、政治離れ、年金問題など、どこか人ごとのように思ってしまいがちですが僕は非常に重大な問題だと思っているんですよね。
交際経験率の低さ、未婚者の数など、日本は世界と比較しても低いのが現状です。
なので、groupyを通して人と出会いやすくなる環境を作っていきたいですね。
同感です。
社会も混沌としていますし、個人が抱える課題もどんどん大きくなっているこの状況ですからね、、。
そうなんですよ。
groupyは”グループ”でのマッチングなので、「人に誘われたから」といった言い訳もしやすくなると思うんです。
マッチンアプリのハードルが高くても、友達からの紹介のような感じで気軽に使って、それが交際率の向上や婚姻数の増加、最終的には少子化対策までひっくるめて解決できたらいいなと思っています。
素晴らしい。八幡さんのチャレンジ精神、そして未来を見据えた様々なメッセージがしっかり伝わってきました。
インタビューさせていただきありがとうございました!
八幡さん、よろしくお願いいたします。
まずは最初に、八幡さんが開発されたgroupyというアプリと現在の活動について簡単に教えていただけますでしょうか?