レポートの書き方・基本編、早くも第三回を迎えました。そして、ここがレポートの書き方の山場です。
前々回の記事でも再三述べているように、レポートには「論理性」と「客観性」が求められます。
それらを補うために必要なのが参考文献です。レポートの質を決めるポイントは、この参考文献にあるといっても過言ではありません。
また、参考文献リストは漏れなく書かなければ「剽窃」になってしまいます。今回の内容は、レポートの書き方の中でも最も重要な部分です。
今回は、レポートの出典表記法などを基礎から学びます。しっかりと内容を把握し、単位を獲得しましょう!
目次
参考文献の探し方
参考文献として挙げられるものは「論文」「書籍」「新聞」「インターネット」などがあります。それぞれの資料の探し方を以下に示します。
論文
オンラインアクセスが可能な論文は「データベース」に集約されています。データベースの検索ボックスにキーワードを入れて検索することで『最新の研究に関する情報』を手軽に探せるので、積極的に利用しましょう。
ここでは、レポート作成に役に立つデータベースを紹介しておきます。
日本語の雑誌論文を探す場合、CiNii(サイニー)を使いましょう。多くの論文がPDF形式でオンライン上に公開されており、大半は無料で利用できます。参考文献を探す最も手軽な方法です。
英語の雑誌論文を探す場合は、EBSCOやWeb of Scienceなどのデータベースがオススメです。(ただし、特定の教育機関に通う学生のみしか論文のサーチができないので注意。)
慶應の学生であれば、上記のサイトを使用する際に慶応義塾大学メディアセンター・リモートアクセスサービスにログインすることで、これらのデータベースの利用が可能になります(要KeioID)。
上記のデータベースに電子化されたデータが存在せず、必要な論文が紙媒体でしか手に入らない場合、各大学の図書館・慶應メディアセンターに所蔵してある可能性があります。または、日本国内の出版物全てを所蔵する国立国会図書館(本館:東京都千代田区永田町一丁目10番1号)に行くと見つかります。
なお、早稲田大学・一橋大学とは図書館相互利用協定を結んでいるため、慶應の学生証でこれらの大学図書館に入館することができます。家の近くにこれらの大学のキャンパスがあれば、ぜひ利用しましょう。
書籍
書籍は、各キャンパスの図書館の蔵書検索・予約状況がわかるKOSMOSから検索しましょう。
それでも手に入らない書籍は、地方の図書館の蔵書を検索したり、前述の国立国会図書館を利用したりする必要があります。
なお、慶應のメディアセンターで学部生が本を借りる場合、和書であれば二週間まで借りられます。貸出期間を延長する場合は、インフォメーションデスクに資料を持ち込んで申し出るかKOSMOSで更新手続きを行う必要があります。(ただし、他の利用者の予約が入った場合は延長不可。更新回数は二回まで。)
延滞した場合、一日一冊あたり10円の延滞料が発生するので注意しましょう。
新聞
慶應の学生であれば、前述のリモートアクセスサービスから、以下のような新聞のデータベースにアクセスできます。テキストデータで閲覧もできるため、引用する際のコピー&ペーストも容易に行えます。
そのため、図書館などに行ってわざわざ紙媒体で閲覧する必要はありません。
過去の記事も網羅しており、同じ内容の記事を各新聞社で比較したり、他社が一面に取り上げているのにある新聞社だけ取り上げてない内容(特オチ)を探したりするだけで、レポートのネタ作りができます。
- 朝日新聞 「聞蔵IIビジュアル for libraries」
- 読売新聞 「ヨミダス歴史館」
- 日本経済新聞 「日経テレコン21」
- 毎日新聞 「毎索」
- 産経新聞 「産経電子版」
- PressReader (Library Press Display)
- LexisNexis Academic
- ProQuest
インターネット
インターネットページは情報の信頼度が低いものが多いので、あまりオススメできません。公的機関(各省庁のページなど)の調査資料といった、情報元がはっきりしているページのみを参考文献として扱うことが望まれます。
とはいえ、インターネットは情報の探しやすさにおいて特に優れており、情報の種類も豊富です。検索エンジンGoogleには以下のような便利な裏技があり、レポートの資料収集に役立ちます。
- 「キーワードA OR キーワードB」大文字の『OR』を入れ、AかBのどちらかを含むページを表示
- 「キーワードA –キーワードB」Aを含むページのうち、『半角ダッシュ』の後(B)を含むページを除外して表示
- 「”キーワード”」『二重引用符』で囲われたキーワードを必ず含むページのみを表示
- 「キー*ード」キーワードの一部を忘れた場合、その部分に『半角アスタリスク』を入れてあいまい検索
- 「related:[URL]」そのURLと関係のあるサイトを表示
- 「site:[URL] キーワード」そのURL内でキーワードを含むページを表示
- 「intitle:キーワード」ページタイトル内にキーワードを含むページのみを表示(キーワードが一つの場合)
- 「allintitle:キーワードA キーワードB」ページタイトル内にAとBを含むページのみを表示(キーワードが二つ以上の場合)
- 「intext:キーワード」テキスト内にキーワードを含むページのみを表示(キーワードが一つの場合)
- 「allintext:キーワードA キーワードB」テキスト内にAとBを含むページのみを表示(キーワードが二つ以上の場合)
- 「キーワード filetype:X」ファイルタイプがX(pdfやdocなど)であるページのみを表示
参考文献の選び方
参考文献を探した後は、その内容が信頼できるものであるかを考慮し取捨選択を行う必要があります。
レポートに使う参考文献の選び方は「どんな資料か」→「資料が論文の場合、どんな種類の論文か」→「その論文はどんな研究書に収録されているか」という順に検討していきます。
資料の種類
生の統計データを「一次資料」と呼び、データを分析してまとめた論文は「二次資料」と呼びます。
論文は執筆者によって一次資料が分析されているため、執筆者視点の分析しかされていません。よって、自分でも一次資料を分析してみることが大切です。
すると、論文に対する批判的な視点が生まれたり、新たな発見があったりします。すなわち、レポートを書くときは二次資料だけでなく一次資料も当たってみるとレポートの質が上がると言えます。
- 一次資料:機関や研究者が調査したデータ
- 二次資料:データを分析して得られたことをベースに書かれた論文や著作物
- 三次資料:書籍、教科書やガイドブックなど
論文の種類
二次資料である論文には、研究論文とレビュー論文の二種類が存在します。研究論文は具体的な内容、レビュー論文は抽象的な内容を扱います。自分の書きたいレポートに応じて適切な使い分けをしましょう。
- 研究論文・原著論文(Research Paper):一般的な論文。独自性があり、自発的に書かれている。
- レビュー論文(Review Paper):今までの研究の概観をまとめる論文。様々な論文に依拠しており、著名な研究者に依頼して寄稿されたものが多い。
研究書の種類と信頼度
論文を纏めて一冊の本にして出版されたものを「研究書」と呼びます。これらの研究書を扱うときは、情報の信頼度に注意が必要です。
- 学会誌:専門の学会で会員が投稿する論文がまとめられている。査読が行われており信頼度が高い。
- 紀要集:大学の教授、大学院の生徒・教授が投稿する論文がまとめられている。査読がされてない事が多く信頼度は低い。
- 学位論文集:博士号を得るために書かれた論文がまとめられている。学会誌や紀要集よりも独自性が低く、信頼度はとても低い。
インターネットから得られる論文のうち、「学位論文」は参考資料として扱わないことが懸命です。学会誌や紀要集の論文を極力参考にするよう努めて下さい。
引用方法
参考文献は参考にした文献(そのまま抜粋しない文献)ですが、引用文献は引用した文献(文章に即して記述、または抜粋した文献)です。
そして、引用時には「原文をそのまま引用」「引用者が手を加えた場合、その旨を記載する」という注意点があります。具体的には以下のようなポイントが挙げられます。
- 原文の表現を一切変えずに(一字一句変えることなく)引用を行うこと
- 原文に誤字・誤植があった場合、間違いの後に「(ママ)」と書くこと(自分のタイプミスではないことを示しておく)
- 原文が旧字体の場合は新字体に改めてよいが「(原文旧字体)」のように注記しておくこと
- 不用な部分を省略する際は「…(中略)…」と書くこと
- 引用文のみでは理解できない部分を補足する際は「[補足:引用者注]」のように注記しておくこと
- 引用する際に、強調する目的で下線を引いたり太字にしたりする場合、「(太字は引用者による)」などと注記しておくこと
- 原文に下線・太字がある場合はその通りに引用し「(太字は原文)」などと注記しておくこと
引用する箇所の長さによって「直接引用(カギ括弧・引用符引用)」「間接引用(参照/パラフレーズ引用)」「ブロック引用」という三種類の引用方法を使い分けます。
直接引用(カギ括弧・引用符引用)
引用する文章が3行以内の場合は「直接引用(カギ括弧・引用符引用)」をします。
注意するポイント
- 執筆者名・出版年度を書く
- 引用部分を「」で括る
- 引用中の「」(会話や筆者が特別な意味を持たせてる語など)は『』で括る
- 欧文の引用をする際は「」の代わりに二重引用符(“”)、『』の代わりに一重引用符(‘’)を用いる
- 引用が分かるように「・・・」の後には以下のような表現を用いる
- 「・・・」としている/述べている/考えている/見なしている/論じている
- 「・・・」と主張している/指摘している/批判している/定義している
- 「・・・」と結論づけている/報告している/説明している/考察している/分析している
間接引用(参照/パラフレーズ引用)
他者の記述を自分の言葉に書き換えて記述することを「間接引用(参照)」と呼びます。
文章の長さにかかわらず、いかなる場合でも間接引用は可能です。しかし、短い文はパラフレーズして記述する必要がないので、なるべく原文に即して直接引用しましょう。
すなわち、間接引用は長い文章に対して文量を圧縮するために使われることが普通です。また、引用したい段落が複数あり、それぞれの段落が離れている場合などでも間接引用を使います。
基本の形
執筆者(出版年:該当ページ)または[通し番号]によると、・・・(要約文)。
注意するポイント
- 原文が示す意味や考え方が変わらないように言い換える
- 必ず出典を示す
- 要約部分は「」で括らない
- 要約した旨を、以下のような表現を用いて示すこともできる
- 執筆者[通し番号]又は(出版年)は、○○を次のように説明している。・・・(要約文)
- 執筆者[通し番号]又は(出版年)にしたがえば、○○は次のようにまとめられる。・・・(要約文)
- 執筆者[通し番号]又は(出版年)を参考にして、○○についてまとめてみる。・・・(要約文)
ブロック引用
3行以上引用する場合は「ブロック引用」をします。
基本の形
執筆者(出版年:該当ページ)または[通し番号]は以下のように説明している。
・・・(引用箇所のブロック)。
注意するポイント
- 引用部分は括弧で括らず、本文より左に二・三字分インデントをずらす
- 引用部分は前後一行分空ける
- 引用ブロックの先頭の文字に空白を作らない(字下げをしない)
- ブロック引用が分かるように以下のような表現を用いる
- 執筆者[通し番号]又は(出版年)は、次のように指摘している。・・・(引用箇所のブロック)。
- 執筆者[通し番号]又は(出版年)は、以下のように考察している。・・・(引用箇所のブロック)。
孫引きについて
他の論文や書籍内で引用・参照されたものを、自分のレポートにそのまま載せる行為を「孫引き」と呼び、剽窃と同じく避けるべき行為とされています。
例えば、A氏の論文内で「B氏は〜と述べている」とあり、自分の論文内で「(A氏によると)『B氏は〜と述べている』」と引用するのは孫引きです。(「A氏によると」の有無にかかわらず、孫引きにあたります。)
A氏の論文に書かれている参考文献リストからB氏の資料を探し、B氏の原典を読んだ上で自分で引用することは孫引きにあたりません。
「B氏は〜と述べている」という表現がA氏による間接引用の可能性があったり、仮に直接引用だったとしても、この一部の文章だけではB氏の意図を汲み取ることができなかったりと、孫引きでは不都合が生じてしまいます。そのようなことを避けるために、参照・引用時に原典をあたることが大切です。
本文中での出典の示し方
本文中で出典を示す方法は「バンクーバー方式」と「ハーバード方式」の二種類が存在します。
バンクーバー方式(引用順方式)
通し番号付きの括弧を用いて、出典を示すべき記述の直後に文献番号を置く方法を「バンクーバー方式」と言います。その通し番号順(参考文献の引用順)に参考文献を列挙します。
通し番号は目立ちづらい上付き文字で書くため、読者にとって本文が読みやすいという利点があります。主に自然科学の分野で用いられている記法です。
ハーバード方式(著者名・発行年方式/挿入方式)
出典を示すべき記述の直後に「(出典文献の著者名 出版年:該当ページ)」を記載する方法を「ハーバード方式」と言います。著者名を五十音順にして参考文献を列挙します。
本文中に著者名と発行年・参考ページを示すため、参考文献を見落としづらいという利点があります。主に人文科学・社会科学の分野で用いられている記法です。
参考文献リスト
参考文献リストに文献を記載する際の様式は、SIST 02を参考にして下さい。細かい様式は論文によって様々なので、必ずしもこの通りに記載する必要はありません。
参考文献リストに文献を記載する際の様式例
【論文の場合】
著者名. 論文名. 誌名. 出版年, 巻数, 号数, 参考にした部分のはじめのページ-おわりのページ.
【書籍の場合】
著者名. 書名. 〈版表示※第二版以上がある場合のみ〉, [出版地,] 出版者, 出版年, 総ページ数[, (シリーズ名, シリーズ番号・シリーズがある場合のみ), ISBN].
【新聞の場合】
著者名. 記事タイトル. 新聞紙名. 出版年月日, 朝夕刊, 版, 該当ページ.
【ウェブページの場合】
〈著者名※分かる場合のみ〉. “ウェブページの題名”. ウェブサイトの名称. [更新日付.] 入手先,(入手日付).
※1:ただし「著者名(出版年)」で書く場合もある。特に、ハーバード方式では「著者名(出版年)」を用いる。
※2:[]内は任意事項であり、書く必要はない。〈〉内は、特定の場合のみ記入する。
※3:人文科学・社会科学のレポートでは、書籍を『』、論文名を「」で括ることがある。
配列について
先ほど紹介したように、バンクーバー方式とハーバード方式では、参考文献の配列が異なります。
- バンクーバー方式:和文は五十音(アイウエオ)順・欧文はアルファベット順
- ハーバード方式:本文の通し番号順
それぞれの学問分野によってどちらを使うかが異なりますが、両方の書き方に慣れておくと後々便利です。
補足事項
- 同じ著者名の文献が連続する場合、二回目以降の著者名は「―――」(全角ダッシュ三つ)を書いて省略できる。
- 同じ著者名で発行年も同じ文献がある場合、その年で早く発行された順に「発行年a」「発行年b」「発行年c」…とする。
- 参考にしたページが1ページだけのときは「p. (該当ページ)」と書く。2ページ以上のときは「pp.(初めのページ)-(最後のページ)」と書く。
- 総ページ数を示す場合は、「(総ページ数)p.」と書く。
- 人文科学・社会科学のレポートでは、書籍を『』、論文名を「」で括って区別することがある。
田中太郎(2000a)『おいしいラーメンの作り方』, 栄籐社, 100p.
―――(2000b)「ラーメンの経済効果」, 日本ラーメン学会誌, vol. 1, no. 12, pp. 12-15
- バンクーバー方式で和文と欧文の文献が両方存在する場合、まず和文を五十音順に並べ、その次に欧文をアルファベット順に並べて記載する。または、和文の参考文献もアルファベット順に並べ、欧文の参考文献と一緒くたにして記述する場合もある。
- 分野によっては、参考文献リストをレポートの末尾に作らない場合がある。その場合は、脚注に参考文献を示しておく。
今回の課題とまとめ
今回の課題
参考文献を探し、本論・結論を書いてみよう。また、参考文献リストを漏れなく書き出そう。
たくさん文献を参照すればするほどレポートの質は上がるので、参考文献を探す作業はレポート作成の要とも言えます。
一方で、参考文献の明示の仕方を間違えると剽窃になる可能性があるため、細心の注意が必要な作業とも言えます。
今回のまとめ
- リモートアクセスサービスにログインし、データベースから文献を探す
- 図書館やインターネットを活用して文献を探す
- 一次資料を分析してみる
- 信頼度の高い論文を選ぶ(学会誌>紀要集>学位論文集)
- 3行以内の引用は「直接引用(カギ括弧・引用符引用)」する
- 3行以上の引用は「ブロック引用」する
- 引用箇所が長い・複数の段落に亘る場合は「間接引用(参照)」する
- 孫引きは極力避ける
- 参考文献の記法は「バンクーバー方式」「ハーバード方式」
次回は『Wordの使い方とレイアウト』について学びます。
履修者が多い講義では、レポート内容がどんなに良くてもレイアウトが雑だと教授の目に留まりません。
逆に、レイアウトが良くまとまっていたら内容が稚拙だとしても、ある程度評価してもらえます。
評価の機会を逃さないために、次回の内容もしっかり確認しておきましょう。