みなさんは「アールブリュット」というものを知っていますか?
フランスの画家ジャン・デュビュッフェによって考案されたこの言葉は、
「既存の美術や文化潮流とは無縁の文脈によって製作された芸術作品」のことを意味しています。
簡単に言えば正規の美術教育を受けていない人が生み出した、美術の主流に属さない独自性の強い作品のことであり、その性質上障がいを持っている人がその担い手であることが多いのが特徴です。
アート界で注目が集まるこのアートブリュットという分野において、「A-BRUT project」なるプロジェクトをたちあげた慶應生がいるという情報を我々はキャッチ。
これは詳しく聞いてみるしかないだろうってことで、「A-BRUT project」代表を務める関口佳那さんにお話を伺ってきました。
目次
プロフィール
項目 | 詳細 |
---|---|
名前 | 関口佳那 |
学部 | 文学部社会学専攻 |
所属サークル | Revolve |
所属ゼミ | 岡原ゼミ |
インタビュー
「A-BRUT project」とはどのようなプロジェクトなのでしょうか?
ハンディキャップを持つ方々のアート作品をプロダクトに落とし込み販売することで、その魅力を発信する活動をしています。
現在は第一弾として野田夢友という方のアートを落とし込んだロンTをwebで販売しています。
どうしてこのようなプロジェクトを始めようと思ったのでしょうか?
大きく二つ理由があります。
一つは、自分でゼロから一つのプロジェクトを作りたいという思いがあったからです。
私自身、コンサルやベンチャーなどのインターンをやってきたのですが、与えらたタスクをただこなすだけで正直なんの生産性もないなと感じていて。
だったら自分でゼロから新しいことを始めた方が有意義だし生産性もあるんじゃないかなと考えたことがきっかけの一つですね
二つ目は、アートブリュットという分野に大きな衝撃を受けたからです。
もともとアートが好きで美術展によく足を運んだりしていたのですが、段々とクラシックアートに違和感を感じたというか、飽き始めちゃって。
そんな時に表参道のMoMa Storeで「そこにある価値点」という展示でアールブリュットに初めて出会いました。
アートって基本的には文脈とか伝統、歴史の上に成り立ってきたものなんですけど、そこで目にした、文脈性がなくて自分の表現欲求に忠実に描かれたパワフルな作品たちに感動しました。
それでこれに関わる何かを始めたいと強く思ったんです。
進めていくなかで苦労したことなどはありますか?
投資などをしてもらっているわけでもないので、失敗しても誰にも迷惑をかけてしまうということがない分、実現までいかなかったり停滞しちゃったりっていうところで苦労しましたね。
それを乗り越えるためにマネジメントは意識してしっかりやりました。
例えばタスクの振り方であっても、いわゆるトップダウンの手法ではなくてそれぞれのメンバーに何がやりたいか、何がしたいのかをちゃんと聞いて、やりがいを見つけさせてあげるようにしてましたね。
どうしてファッションという形を選んだのでしょうか?
もともとハンディキャップがある方々がかわいそうだから支援したいというスタンスではないんです。
すごくイケてるアートが存在しているのに十分に発信されていない、だから発信していく。
その担い手がたまたま「障がい」と呼ばれる特徴を持った人たちだった、というのがこのブランドのスタンスです。
「支援」ではなくて「アート」として発信していきたいんです。そのためには企画が「かっこいい」ことが絶対に必要だと考えました。
それでかっこいいといえばファッションだろうということで今のような形になりました。まずファションとしてデザインの良さから入ってもらい、そこで興味を持ってもらいたい。
そのためにも、ビジュアルには徹底的にこだわりました。フォトグラファーのNiko WuさんやWEBデザイナーに強力していただき、企業によるファッションブランドにも引けを取らないビジュアルを目指しました。
なにか慶應の後輩たちに伝えたいことはありますか?
さっきも少し言ったのですが、社会の流行に流されてただ漠然とインターンなりをやっている人が多くて本当にもったいない!
それよりも自分でゼロから始めた方が絶対に得られるものも大きいし、たとえ失敗してもそれはそれで自分の成長の糧になりますし。
できるできないかじゃなくて、やるかやらないかの問題だと思います。
プライベート
趣味などはありますか?
最近はガーデニングにはまってます(笑)
お酒を飲むのも好きなので、自分で育てた花なんかを見ながら一人で晩酌するのが1番幸せな時間です。
休みの日はなにをされてますか?
吉祥寺のシーシャにとりあえず友達と集まってダラダラしてます。
あとはネトフリで映画を見たり本を読んだりとかですかね。
インタビューしてみて
僕自身、彼女の言葉に大きな衝撃を受けました。
自分でゼロから始めるということも、言うわ易し行うわ難しでなかなか実現できることではありません。
でも彼女はアートという慶應とはいささか縁が遠そうな分野で、もうすでに一つのコンテンツを完成させていて、その発言にはとても重みがありました。
第一弾で作られたロンTもめちゃくちゃカッコよくて、ハンディキャップをかかえた方のアートを落とし込んだというバックグラウンド抜きにして魅力的な商品でした。
ただ漠然と生活してしまいがちな大学生活、僕たちも何かアクションを起こせるような人間でありたいものです。
次週もお楽しみに!!