『スイミー』の物語は就活への手がかりだった!?就活に必要な団結力とは

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「就活期は全員が敵に見えるーーそんな状況だからこそ、私たちは『一枚岩』を目指すべきである。」

本日の記事はあたかも有名な人物が遺したような仰々しい言葉からスタート。残念ながら、この言葉はスティーブ・ジョブズのものでも孫正義のものでもなく、『スイミー』を読んだ私の実直な感想です。

一枚岩と聞くとエアーズロックのようなデカい塊を想像する方もいらっしゃると思いますが、「集団が岩のように団結する」という意味を持つ表現でもあります。

さて、皆さんは小学校の国語の教科書で慣れ親しんだ『スイミー』という物語を覚えているでしょうか?

実はこの物語、就活において企業から求められる「団結力」について教訓的に描いたものだったのです。

本記事は、そんな『スイミー』という物語に暗示された「団結力」の条件について、様々な学問の知見を用いて解説していきます。

就活で企業が学生に求める能力

2018年4月17日一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)の『高等教育に関するアンケート結果』によると、企業は文系・理系学生に対して「課題設定・解決能力」「チームワーク・協調性」を求めていることがわかります。

本記事では、この二つの能力に焦点を当てて『スイミー』という物語を分析していきます。

順位 文系学生に求める能力 理系学生に求める能力
1位 主体性 主体性
2位 実行力 実行力
3位 課題設定・解決能力 課題設定・解決能力
4位 チームワーク・協調性 創造力
5位 社会性 チームワーク・協調性

スイミーのあらすじ

広い海の中、小さな魚の兄弟がのどかに暮らしていた。魚の兄弟はみんな赤色だが、その中に一匹「スイミー」というカラス貝よりも真っ黒な魚がいた。

ある日、腹を空かせたおそろしいマグロが小さな魚の兄弟を襲った。スイミーは泳ぐのが誰よりも速かったので逃げ切ることができたが、他の小さな赤い魚たちは一匹残らず飲み込まれた。

スイミーは恐怖・寂しさ・悲しさに打ちひしがれながら、暗い海の底を彷徨った。しかし、海に存在するおもしろいものを見るたびに、だんだん元気をとりもどしていく。

ある時、岩かげにスイミーのとそっくりの、小さな魚の兄弟たちを発見した。

「出てこいよ。みんなであそぼう。おもしろいものがいっぱいだよ。」と声をかけるスイミーに対し、小さな赤い魚たちは「だめだよ。大きな魚に食べられてしまうよ。」と天敵に対する恐れを露にする。

「だけど、いつまでもそこにじっとしているわけにはいかないよ。なんとか考えなくちゃ。」スイミーは熟考の末「みんないっしょにおよぐんだ。 海でいちばん大きな魚のふりをして。」と言った。

そして、皆が一匹の大きな魚みたいに泳げる様になった時、持ち前の身体の色を活かしスイミーが目の役割を担った。ついに大きな魚を追い出したのだった。

仮想敵の設定(チームワーク①)

多くの人々を動かすためには、特定の敵を作ることが有効であるとされています。団結力の形成のために設定された超えるべき目標(敵)のことを「仮想敵」と呼びます。

卑近な例で言えば、政治家が挙げられますね。

特定の政策を支持する政治家を「仮想敵」に設定し、批判することでその政策の反対派となる国民が一枚岩となる--このような過程こそが団結の近道であり、政治家はこのことを利用して大衆を扇動します。

同様に、スイミーは「大きな魚」を仮想敵にし、小さな赤い魚たちに対し団結を呼びかけました。

権力を持たない一般市民などのマジョリティ」が「大きな魚のように権力を持つマイノリティ」に打ち克つ、いわゆる革命を羨望する気持ちが団結力をより強固なものにします。

大義名分による結束効果(チームワーク②)

出てこいよ。みんなであそぼう。おもしろいものがいっぱいだよ。」と小さな赤い魚たちに呼びかけたものの、大きな魚に食べられることを恐れて外へ出るのを拒まれたスイミーは、続けざまにこういいました。

だけど、いつまでもそこにじっとしているわけにはいかないよ。なんとか考えなくちゃ。

この一言は、現状に対する問題提起でありながら、「外に出る」という行動を正当化する根拠でもあり、それすなわち「大義名分(行動に正当性を主張するための道理・根拠)」だと言えます。

大義名分を掲げることも、大衆を団結させる方法としては有効とされています。そして、それが論理的根拠で支持されているほど、その結束力は強いものになります。

適材適所の重要性(チームワーク③)

渋沢栄一が著した『実験論語処世談』には、以下のように書かれています。

人には各々長所短所があるものであるから、人の先きに立つて用ゐる人は能く之れを見分けることが大切である。…(省略)…私なども常に人の長所短所、適材適所と云ふことを努めて居ても、時々は見そこなひをして居る。…(省略)…先づ政治上から云へば、上総理大臣より、下は区役所の吏員に至るまで、果して適材を適所に配して仕事の能率を挙げるやうにして居るであらうか。即ち内務大臣は内務大臣として適材が適所にあるか、大蔵大臣は大蔵大臣として適材が適所にあるか、若し、これが行はれて行けば平仄が揃つて順序能く進んで行くものである。さうでないと其処に色々な支障が出来て、思ふやうに仕事が進行せぬことになる。

為政者や上の地位の者は能力の評価を適切にすることが大切である。そして、長所と短所に鑑みて適切な能力がある者が適切な役職につけば、仕事の能率は向上する。

一方、役職を全うする能力がない者がその役職についてしまうとデッドロックに陥ってしまう。

渋沢の『論語』解釈には、このようなことが示唆されています。

そして、「ぼくが、目になろう。」と口火を切ったスイミーは、周囲とは違う「個性」である黒い体躯を適所に置くことに成功しました。

人と姿が違うことは「欠点」と捉えられるかもしれませんが、一方で「美点」と捉えることも可能です。

欠点」であると先入観を持つ前に、それを活かすことができる方法を考えるーーこれが、適材適所を実現する方法です。このような多面的な物の見方は『複眼的な見方』『複眼思考』と言います。

Aim(目標設定)の法則(課題設定・解決能力)

目標の種別 定義 『スイミー』における目標 アクションの起こしやすさ ブレイクスルーの起きやすさ
行動目標 アクションをわかりやすく伝える 離れ離れにならず、みんな一緒に泳ぐ
成果目標 最終的に手に入れたい結果・成果 海で一番大きな魚のふりをする
意義目標 その先にある実現したいこと 外の世界に出て楽しく遊ぶ
(参考:麻野耕司『THE TEAM: 5つの法則』幻冬舎)
※ブレイクスルー:行き詰まりの状態を打開すること。進歩。前進。障壁の突破。
目標にも様々な種類があり、多くの小目標と一つの大目標を組み合わせて設定することが効果的と考えられています。

共通目標の下に動く団体は、結束力の高いチームである。
多くの就活生グループは情報を交換したり共有したりするに留まっている、所詮はグループ活動と言わざるを得ない状態です。

持つべきものは、仲間と共通目標。結局はこの二つに帰着します。スイミーは外の世界を目指すという目標の下、仲間を携えて行動を引き起こしました。

さいごに

仮想敵・大義名分・適材適所・目標設定という四つのキーワードは、団結における必要不可欠な要素です。

スイミーだけでなく、この手の(「他者との協力」をテーマとした)絵本文学は、暗にこの要素を描いていることが多いのです。

もちろん、これらの考え方はある意味で「偏見」とも言えます。あくまでも、学問が出した現時点での答えなので、この記事に書いてあることが全てとは言えないでしょう。

ただ、ある程度「団結の条件」を知っておくことで、生活が豊かになる可能性もあります。グループディスカッションで意見をまとめるときは、少し意識をしてみるといいかもしれませんね。

※参考までに、大衆扇動論を学ぶ心理学者は、スイミーに見られるような団結の方法を学問として研究しています。そのため、慶應OBであるメンタリストDaiGo氏の書籍が就活の場などで役立つかもしれません。

ABOUT この記事を書いた人

法学部政治学科。下の名前は「りょうせい」ですが、寮生ではありません。両生類でもありません。
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